過去帳でご先祖をたどる|お寺の記録でわかることと閲覧の心得

先祖をたどる旅では、まず戸籍をさかのぼっていきます。けれども日本の戸籍制度が整ったのは明治の初めごろ。多くのご家庭では、江戸時代の末ごろにお生まれになったご先祖さままでたどったところで、記録がふっと途切れてしまいます。「ここから先は、もうわからないのだろうか」——そう感じられたとき、その先をそっと照らしてくれるのが、菩提寺に伝わる「過去帳(かこちょう)」をはじめとする、お寺の記録です。

お寺に眠る「過去帳」とは

過去帳とは、お寺が檀家の亡くなった方について書き記してきた帳簿です。鬼籍(きせき)や点鬼簿(てんきぼ)とも呼ばれ、古くは平安時代にその源流がみられます。一人ひとりの記録として、次のような事柄が残されていることがあります。

  • 戒名・法名
  • 俗名(生前のお名前)
  • 亡くなった年月日(命日)
  • 享年・行年(亡くなったときの年齢)
  • 続柄や、どの家の方かを示す覚え書き

戸籍が「役所の記録」であるのに対し、過去帳は「お寺が代々守り継いできた、いのちの記録」です。戸籍よりもずっと古い時代の方のお名前が記されていることもあり、ご先祖さまの歩みを知る、かけがえのない手がかりとなります。

過去帳で、先祖はどこまでわかるのか

お寺やご家庭に残る記録の状態によって大きく異なりますが、うまく伝わっていれば、江戸時代の初めごろ——今からおよそ四百年前のご先祖さままでたどれることもあります。戒名や命日がわかると、戸籍では「お名前だけ」だったご先祖さまが、はじめて手を合わせる相手として胸に迫ってまいります。

なお、過去帳は菩提寺だけでなく、本家にお位牌とともに大切に保管されていることもあります。まずはご親族にそっと尋ねてみることも、調査の大切な一歩です。

さらに、過去帳だけに頼らず、次のような記録と照らし合わせると、ご先祖さまの姿がより確かに浮かび上がってきます。

  • お位牌に刻まれた戒名・没年
  • お墓の墓石に彫られたお名前や年月
  • 本家に伝わる古い家系図や言い伝え

戸籍でわかった没年月日と、過去帳や墓石の記載が重なり合ったとき、ひとつの事実として安心して家系図に刻むことができます。

過去帳のルーツ——寺請制度と宗門人別改帳

過去帳がこれほど広く残っているのには、江戸時代の制度が深く関わっています。江戸幕府はキリシタンでないことを証明させるため、人々がいずれかのお寺の檀家であることを求めました。これを寺請(てらうけ)制度といい、島原の乱の前後——寛永十五年(一六三八年)ごろから広まったとされます。

さらに一六七一年(寛文十一年)には、宗旨の調べを「人別帳」を用いて行うよう幕府が指示し、各地で「宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)」が作られました。これは今でいう戸籍に近い役割をもつ台帳で、お寺が地域の人々の身元を把握するしくみが整っていったのです。宗門人別改帳はその後、明治六年(一八七三年)に廃止されるまで、およそ二百年にわたって各地で作られ続けました。こうした歴史の積み重ねの上に、今日まで伝わる過去帳があります。

今、過去帳の閲覧には心くばりが必要です

一方で、近年は過去帳をそのまま見せていただくことが難しくなっています。かつて過去帳が身元調査などに不当に使われ、差別につながってしまった反省から、仏教界では各宗派が「過去帳を第三者へ開示しない」取り組みを長く続けてきました。個人情報保護・プライバシー保護の考え方が広く根づいた今では、たとえご親族であっても、お寺が閲覧を慎重に判断されるのが一般的です。

ですから、お寺の記録をたどるときは、次のような心構えを大切にしたいものです。

  • まずは自分の家の菩提寺と宗派をたしかめる
  • ご住職には礼を尽くし、調べたい思いや目的を正直にお伝えする
  • 見せていただけない場合も、その判断を静かに尊重する
  • わかった範囲の戒名や命日だけでも、ていねいに書き留めておく

お寺の記録は、ご先祖さまと、それを守り継いでこられた方々の祈りが宿るものです。急がず、感謝の気持ちを携えて向き合うことが、何よりの近道になります。

KINOKAZEでは、戸籍の調査から、その先のお寺や親族への聞き取りまで、一つひとつのご縁を大切にしながら、真心を込めてお手伝いしております。「うちの家系は、どこまでたどれるのだろう」——そんな素朴な思いからで構いません。どうぞお気軽にお声かけください。

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